令和5年度首里城基金復元事業について

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令和4年度より、焼失した、あるいは展示が可能な状態ではない美術工芸品の復元製作を開始しました。令和5年度までに「尚育王筆「地静春」対句」1点の復元が完了し、染織1点の復元を行っています。
このほかにも複数年にわたり、今後も長く復元が行われます。
 

1)書跡

  • 名称:尚育王筆「地静春」対句(復元製作品)
  • 概要
    すぐれた書家として知られる尚育王(1813-47)による対句の掛け軸です。まだ独自の書風が確立される以前の十代の初々しい作品とみられます。漢詩の内容は「大地の穏やかな春はいよいよ好ましく、人々の間に時間がゆっくり流れる」の意味で、めでたい春の風情を祝っています。

尚育王筆「地静春」対句(復元製作品)
尚育王筆「地静春」対句(復元製作品)

  • 復元
    火災で焼失した原本の画像を詳細に観察し、さらに県内の主な所蔵機関の尚育王書跡の調査を行い、本紙・墨・印章(印泥)などの復元材料を決定しました。細かい書き癖について繰り返し試筆して確認したのち、原寸大の画像コピーを2枚用い、伝統的な透き写しによる双鉤填墨(そうこうてんぼく)技法と臨書技法を併用して模写作品を完成させました。表装も国王書跡に似合う朱色・龍文様の名物「紹巴裂(じょうはぎれ)」を用いました。
原本画像・類例資料調査をもとに選ばれた筆墨硯紙(ひつぼくけんし)。
原本画像・類例資料調査をもとに選ばれた筆墨硯紙(ひつぼくけんし)。
調査をもとに摸刻された印章3顆(か)。
調査をもとに摸刻された印章3顆(か)。
試筆
2枚の原寸コピーを用い、伝統的な透き写しによる双鉤填墨(そうこうてんぼく)技法と臨書技法を併用して模写を行なう。※画像は一文字ごとの試筆
完成した本紙を、入念に選んだ裂(きれ)を用いて掛け軸に仕立てる。
完成した本紙を、入念に選んだ裂(きれ)を用いて掛け軸に仕立てる。
資料名 復元製作
尚育王筆「地静春」対句(復元製作)  幸喜洋人(揮毫)・當間巧(石川堂 表具)

 

2)染織

  • 名称:No.465 絽織染分地鶴と松梅菊両面紅型胴衣
  • 法量:丈95.0cm 裄丈77.0cm(令和5年度採寸)
  • 概要
    五つ絽と平織組織で製作された柔らかな絹布地に紅型が染められた胴衣(ドゥジン)。模様は、型紙を生地の両面(表裏面)に置き、黄・赤・紫色の3色で染め分けした上に、鶴・松・梅・菊の繊細な模様が両面に染色されています。また、原資料の色材については非破壊色材調査の結果、白は鉛白、黄は石黄、赤は朱、紫は臙脂、緑は石黄とベロ藍の混色、灰色及び黒は墨であることが判明しました。

絽織染分地鶴と松梅菊両面紅型胴衣
絽織染分地鶴と松梅菊両面紅型胴衣

  • 復元
    令和5年度は「絽織染分地鶴と松梅菊両面紅型胴衣」のトレース、類似型紙資料の熟覧調査、糸掛け型紙試作と本製作を実施しました。原資料の型紙が存在しないことから、原資料(衣裳)から下絵を起こし型紙製作をすることとしました。また、両面染めであることから、両面が使える糸掛け型紙の製作に取り組みました。
白生地
白生地
原資料を基に図案をトレース
原資料を基に図案をトレース
図案に合わせて型紙を彫る
図案に合わせて型紙を彫る
掛け糸を縫う
掛け糸を縫う
型紙完成
型紙完成
復元 復元製作者
白生地 山城有希子
紅型 古紅型研究会 群星

3)今後について

令和6年度については、過年度からの継続を含む書跡2件、染織2件の復元を行います。被災した美術工芸品の復元にあたっては、調査や復元方法の検討を行いながらとなるため、今後も長期に渡る作業となります。

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