首里城2026年マチカンティー

若手職人インタビュー #08


大城 翔太郎さん(有限会社 内田工務店)

有限会社 内田工務店:https://www.tutikabekoubou.jp/

―大城さんは沖縄ご出身とのことですが、今回の正殿復元事業に携わることになったきっかけを教えてください。

私は浦添市出身で、那覇市にある沖縄県立沖縄工業高校で建築を学んだ後、神奈川県伊勢原市に拠点をおく宮大工集団「有限会社 内田工務店」に入社しました。そちらで神奈川を拠点に関東周辺の社寺建築や文化財の修理、あとは茶室の改修や新築工事なども行っていて、直近ではお寺の本堂の屋根替えを担当していました。
 
こちらの現場へ来ることになったきっかけは、社長の知り合いから首里城の現場で人手が足りないから誰か来てくれないかと打診があった際に、私が沖縄出身ということで気を遣っていただいたのか声をかけてもらって。首里城正殿復元事業のことはもちろんニュースなどで見て知っていましたが、まさか自分がその現場に関われるとは思っていなかったので、こちらに来させていただけることになってすごく嬉しかったです。

作業風景

―首里城の火災が発生したときにはどちらにいらっしゃったのでしょうか?

たまたま出張で箱根の現場にいた時でした。朝起きてニュースで首里城が燃えているという話を聞いて、とても驚いたのと悲しい気持ちになったことを覚えています。まさか首里城が燃えるなんて思ってもみなかったので、最初は何が燃えているのか全然頭に入ってこないような感じでしたね。首里城は学校の遠足で訪れたり、あまり覚えていないんですが小さい頃に母親と一緒に年末に開催されるお祭りを観に行ったりしたこともあったそうです。
 
首里城の焼失後しばらく経って家族から電話があったときに、「当時は火の勢いがすごくて夜空が赤くなるほどだったんだよ」という話を聞いて、改めて大変なことだったんだなと。その時に「もし今後首里城を建て直すことになったら沖縄に来られたらいいね」ということも話していたので、今こうして実際に現場に携わることになって家族も喜んでいるんじゃないかと思います。

―現在はどんな作業を担当されているのでしょうか?

首里城の屋根には最終的に赤瓦が葺かれるんですが、その瓦を乗せる「瓦座(かわらざ)」と呼ばれる木材を機械で切り出しているところです。切り出した後は、丸い形の瓦がきちんと収まるよう木を曲線に彫っていって、そこに瓦を乗せていくという流れになります。

作業風景

機械の台座に角度をつけているので、しっかり木材を押さえながら切らないと下にずり落ちてしまって、刃に無理な力がかかって割れてしまうことがあるんです。なので、長い木材や重たい木材、小さくても加工がしにくい場合には、近くにいる職人さんに声をかけて一緒に作業してもらうということも結構ありますね。
切る場所が少しでもずれてしまうと、最後の取り付けのときに「あれ、ちょっと違うな」となってしまうので、そうならないようまっすぐな線で切ることを意識しています。それから瓦座はちょうど正面のみんなから見える位置にあるので、瓦がきれいに乗るようきっちりとした仕事をしようと心がけています。
 
正殿復元の現場に入ったのは2023年9月の初めぐらいなんですが、いちばん最初は建物を支える丸柱の仕上げやカンナ掛けから入って、その後は屋根の模型を作ったり、「御差床(うさすか)」と呼ばれる場所(国王の玉座)の横に取り付ける龍の彫刻の荒取りをさせてもらったりと、本当にいろいろな作業を経験させていただいています。

作業風景

―これまでに経験されてきた他の現場との違いなどはありますか?

例えば、先ほどの話に出てきた龍の彫刻自体は本州の社寺建築にもあるんですが、龍の指の本数が違っているそうなんです。本州では3本、沖縄は4本、中国は5本(※諸説あり)というのを聞いたことがあって。詳しい理由は分からないのでいつか調べてみたいと思っているんですが、そういう同じものでもちょっとした違いがあるのは面白いですね。
またこれまで携わってきた社寺建築では昔から使ってきた材料をできるだけ残して修繕作業を行うことが多く、イチから新築で建てるという機会はなかなか無いので、その現場に参加できたということはすごく嬉しいです。

作業風景

これだけ大きい現場というのも初めてで、現場で働いている職人もそうですし、現場以外でもこの事業に関わっている方が本当にたくさんいて、そのなかでいろいろな人と関われるのがすごく楽しいです。全国からそれぞれの技術を持った職人が集まってきているので、どんどん積極的に関わって、この現場が終わった後も全国どこかで繋がっていけるような仕事をしたいと思っています。

―現場の雰囲気はいかがですか?

県外から来られている方が多かったり結構年齢が離れていたりもするんですが、みんな本当に優しくしてくれますし、分からないことはその都度教えていただけるので、とても雰囲気が良くて仕事がしやすいです。それはやっぱり山本総棟梁がみんなをまとめてくれたり、食事に連れて行ってくれたりして、普段からコミュニケーションを取りやすくしてくれているおかげだと思っています。

作業風景

―首里城正殿復元作業にかける思いをお聞かせいただけますか?

首里城は自分が生まれ育ってきた沖縄を象徴する建物ですが、これまで何度も焼失してしまったり、一部が崩れて修復工事を行っていたりと、すべてがきちんと建っている状態というのがなかなか無かったんじゃないかと思うので、今回100年、200年と残るようなきっちりとした仕事をして、また次の世代が修復を行うときには自分たちの仕事を見て「素晴らしいな」と思ってもらえるような建物を造りたいです。
私は職人としてはまだまだ駆け出しで周りに教えてもらうことのほうが多いですが、今回の正殿復元事業を通して学んだ技術や知識をこれから周りの職人や後輩たちにしっかりと伝えていく、繋いでいくことが大事だと思っています。

インタビュー風景

取材日:2024年5月29日

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首里城公園

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