ホーム > 首里城復興へのあゆみ > 首里城2026年マチカンティー > 若手職人インタビュー #11
―現在のお仕事を始められた経緯と、首里城正殿復元工事に携わることになったきっかけを教えてください。
私は沖縄県内の工業高校出身で、元々は建築ではなく電子機械科というところで学んでいました。卒業後は大阪にある大手メーカーに就職して働いていたんですが、自分が思い描いていたようなやりがいが感じられず、退職して沖縄に戻って来ました。
元々小さい頃から建築が好きだったので、この機会にちゃんと建築を学びたいと思い、20歳のときに沖縄県内の建築の専門学校に入学しました。そこで2年間学んだ後、22歳で株式会社 國場組に就職しました。
現在入社して8年になるのですが、最初は小学校を作る現場からはじまり、その後、那覇バスターミナル、恩納村や糸満市のリゾートホテル、那覇の牧志公設市場と県内のいろいろな現場に携わった後、こちらの現場に参加することになりました。
ちょうど前の現場が終わって次に切り替わるタイミングで、部長から「首里城の現場に行ってくれないか?」と声がかかって。自分では全く予想していなかったのですごく嬉しかったです。
―首里城の火災が発生したときにはどちらにいらっしゃったのでしょうか?
火災があったときは糸満市のリゾートホテルの現場にいた頃で、深夜だったのでまだ家で寝ていました。朝のニュースで知って、もう驚いてテレビの前で固まってしまって。
首里城は小さい頃から学校行事などで見学に訪れてもいましたし、地元の那覇市民ということもあって身近な存在だったのですごくショックでした。
祖母が那覇市松尾に住んでいるのですが、やはりあれだけ大きな火災だったので、焼け焦げた臭いが風に乗って流れてきたと当時話していたことを覚えています。
―復元工事に携わることになって、ご家族や友人の反応はいかがでしたか?
家族はとても喜んでくれましたね。たまたま現場が切り替わるタイミングが合ったのと、運が良かったからだと思いますが、やはり首里城正殿の復元工事に携われることは沖縄県民としてとても嬉しいです。
―現在はどんな業務を担当されているのでしょうか?
職人さんに安全かつ効率よく作業してもらうための足場の仮設工事や正殿の塗装工事、屋根の瓦工事、あとこれから「龍頭棟飾(りゅうとうむなかざり)」という屋根の上に龍の飾りを取り付ける作業が始まるので、その外装などをメインに施工管理しています。現場の納まりを検討するなど、安全や品質、工程管理などの業務があります。
現場での打ち合わせもありますが、首里城は公共工事ということもあり、各種書類作成のためのデスクワークも多いです。
―業務の上で難しいのはどんなところでしょうか?
首里城では「漆塗装」といって、普通の建築では見ない様な特殊な塗装を行っています。それも場所によって仕様が違っていて、多くて27もの工程をふまないといけない場所もあり、ものすごく時間がかかります。
素屋根があるので雨風はしのげるんですが、上塗りという工程では湿度と温度で大きく影響を受けてしまうので、日によって塗れなかったり塗ったとしても上塗り材が乾燥しきれず、剥がして塗り直しをしなければいけなかったり。そういうことも起こり得るので、工程の調整がなかなか難しいところです。
―では、現在のお仕事の魅力や、やりがいを感じるのはどういったところでしょうか?
やっぱり一番大切なのは現場でのコミュニケーションだと思っています。建築は自分たち現場監督だけではできるものではなく現場の職人さんと一緒にチームで作りあげていくものなので、工程ごとにしっかりと話し合いながら工事を進めるようにしています。上手くいったときは一緒に喜び合えますし、上手くいかないときは一緒に考えて、悩んで、解決していけるところが魅力だと思います。協調性やチームワークがとても大事な仕事なので、そうやってひとつの課題をチームで乗り越えられたときはすごく嬉しいですね。
―現場の雰囲気はいかがですか?
現場の雰囲気はとても良くて、“みんなで一緒にものづくりしている”という感じがします。月に一度「職長会」といって、職人さんやそれぞれの会社のトップの方との懇親会があるんですが、そこで普段現場でなかなかゆっくり話せないことを話したり、意見交流したり、冗談とかも言ったりして。他の業者さんがここまで作業を進めてくれないと自分の工程に取りかかれないといった事もあるので、現場の作業を円滑に進めるためにもコミュニケーションがすごく大事になってくるんです。
職長会を通じて他職の職長さん同士が仲良くなりましたし、現場でもコミュニケーションがしっかり取れていて、チームで首里城を作っていく上ですごく風通しが良いというか、和気あいあいとした良い環境だなと感じます。
―最後に、首里城正殿復元作業にかける思いをお聞かせいただけますか?
正殿の復元工事に使用する資材には国内外の皆さんからの寄附金も含まれているので、妥協せず品質的に素晴らしいものを作っていきたいです。首里城はこれまで火災で焼失するたびにその時代の人々が復元してきていますが、いつか自分がいなくなった後も後世の人達に「令和の復元がいちばん良かったね」と言ってもらえるぐらい、この先100年、200年と残っていく首里城とそこに寄り添う人々のために、ワンチームでものづくりをしていきたいです。
取材日:2025年2月10日
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