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―金城さんは沖縄の首里出身だそうですね。
首里城火災を知ったときのことを教えてください。
首里の石嶺出身です。自宅から首里城が見えるということではないのですが、首里城は生まれたときからずっと当たり前にあるイメージでした。親となり、子どもが生まれてからは一緒に首里城公園の北側にある龍潭池に遊びに行ったりしていました。
首里城火災を知ったのは当日の明け方です。
首里城から自宅まで1キロぐらいは距離がありますが、遠くでサイレンの音がずっと聞こえていました。
また火災の数日後に首里城祭が予定されていたんですが、そこにプライベートで屋台を出店する予定だったんです。
友人たちとその予定がどうなるかなどは話し合いましたが、その時点ではまさか数年後に復元に関わるとは思っていなかったです。
―復元作業ではどのようなお仕事をされているんでしょうか?
首里城正殿復元事業では木材を組む前の大工さんが加工した木材に対して、防蟻薬を塗布します。
沖縄は年中温かい気候なのでシロアリ被害も多く、建築中や建築後に防蟻薬を塗布する予防作業と、入ってしまったシロアリの駆除作業が主な仕事です。
木材の大きさで違いもありますが、塗布する木材は1日50本から100本程度だと思います。
―これまでの現場と違うところは多いですか?
民間住宅や公共施設だけでなく文化財に携わることもありますが、行う作業内容の違いはほとんどありません。
ただ通常の現場では希釈した薬を散布機で広範囲に散布することが多く、その方が早いのですが、今回は重要な地域のシンボルである施設ということもあって周りへの薬の飛散をなるべく抑えられる刷毛とローラーを使って塗っています。
首里城は防蟻スケジュールがしっかり決まっているので、復元後も木材にシロアリが入るような被害は発生しないのですが、それでも木と木が接合される部分は塗り直しができないので塗り残しがないように意識して塗布するようにしています。
今作業している木材が、最終的に正殿のどこの部分になるのかは分かりませんが、今までの現場では見たことのないぐらいの大きな木材があるのには驚きます。
また「見せる復興(※1)」なので、いつもの現場にはない人の目があるので、少し緊張しますね。
―首里城正殿復元事業に関わると知ったときはどう思いましたか?
弊社役員が30年前に行われた復元の防蟻処理に携わっていたのもあり、今回も声がかかるのではないかと言われていました。
ただ前回とは施工の方法や流れも違い、薬の種類、選定方法についても同じでいいのか変更が必要なのか、何度も検討しながら準備を進めました。
前回の書類は残っていますが、流れや関わる人が違うので実際に作業をしてみないとわからないことも多く、作業前の仕様書を用意するのが大変でした。
実際に関わると決まったあとも本当に自分たちがやるんだという昂り(たかぶり)と同時に、不安もありました。でもやってみると今まで培ってきたものを応用して対応できるという自信になりました。
30年前の復元に関わった役員は毎日⼀緒に作業をしているのですが、変わった箇所は、ひとつひとつの作業自体よりも安全管理がより強化されたことが一番違うと言っていました。
―周りの人からはどのような声がかけられますか?
首里で生まれて育ってきたので家族には「いい仕事に携われてよかったね」と言われます。
子どもたちにも毎朝「今日も首里城に行くの?」と目を輝かせて聞かれます。父親が首里城正殿復元工事で働いていることを学校の友だちに自慢しているようです(笑)
―最後に首里城正殿復元作業にかける思いをお聞かせいただけますか?
復元には多くの人が関わっていますが、1人1人の仕事が合わさって首里城の正殿が復元されます。
僕の仕事は、あとから見てここを作ったんだとわかるものではないですが、沖縄の木材建築を守る重要な仕事です。
みんなで力を合わせて復元作業をしている。その気持ちで一生懸命関わりたいなと思っています。
取材日:2023年7月13日
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