首里城2026年マチカンティー

若手職人インタビュー #07


小松 優喜さん(いろは工舎)

いろは工舎:http://irohakousya.com/

―宮大工を志したきっかけと、今回の首里城正殿復元事業に携わることになったきっかけを教えてください。

幼い頃からものづくりが好きで、小学生の時にはもう「大工さんになりたい!」と言っていました。そこから宮大工になりたいと思ったのにはきっかけがあって、中学の修学旅行で京都と奈良を訪れた際にたくさんの伝統建築を目の当たりにして、建物自体ももちろん素晴らしくて感動したんですけど、建物の周りにわーっとたくさんの人が集まって、大人も子どもも、それこそ外国の方までが建物を一心に見つめている光景を見て、何がこんなにも人を惹きつけるんだろうって衝撃を受けたんです。その時に、大工は大工でもこういう仕事がしたい、宮大工になりたいって思ったんです。
 
中学卒業後すぐにでも弟子入りしようと考えていたんですが、部活もやっていましたし、高校までは行ってほしいと親や先生に言われたこともあって進学することにしました。高校を卒業して、さあようやくと思ったのですが、「基礎知識ぐらいは身につけておいたほうが就職にも有利なんじゃない?」と勧められて、新潟県佐渡市にある専門学校「SADO 伝統文化と環境福祉の専門学校」で伝統建築を3年間学びました。

作業風景

そして専門学校卒業後に、佐賀県にある「いろは工舎」に入社しました。元々は、法隆寺の修理をしていたことでも有名な西岡棟梁の技術を受け継いでいる会社「鵤(いかるが)工舎」という会社で昔ながらの技法を学びたいと考えていたのですが、そのお弟子さんが私の地元の福岡と同じ九州の佐賀県で会社を立ち上げたということを聞いて、募集もなにもしてなかったんですが「働かせてください!」と飛び込んで雇っていただきました。
その後、「いろは工舎」親方の一瀬さんに日本伝統建築技術保存会を通して首里城正殿の復元工事に参加しないかとお声がかかった際に、親方からの推薦があり2023年の秋頃から私も一緒に沖縄に入らせていただくことになりました。

作業風景

―現在はどんな作業を担当されているのでしょうか?

以前に墨付け・加工を担当した「根太(ねだ)」という部材を、上層屋根の中で取り付けるための割り付け作業を行っています。根太というのは床板を支えるための木材なんですが、それを梁のどこに・どのように置いていくのか、位置を測りながら墨で印を入れていく作業です。
この作業では一箇所でも位置を間違えてしまうと全部が組み上がらなくなってしまうので、間違いの無いようしっかり確認するように気をつけています。

作業風景

その前は、「妻(つま)」と呼ばれる屋根の両側面にある三角形部分の片側の取り付け作業を担当したり、上層と下層の「茅負(かやおい)」「木負(きおい)」と呼ばれる軒廻りの化粧材(屋根の反りを作っている部材)の墨付け作業をしたり、「扇垂木(おうぎだるき)」の加工を行ったりと、本当にいろいろな経験させていただきました。
「妻」の取り付けでは、足場に登って部材をはめてみて、降りて少し削って、また登ってはめて、また降りて…と微調整を何度も何度も繰り返す作業が結構大変でした。
でも、完成したら隠れて見えなくなってしまう部分でも決して手を抜かず、できるだけノミの跡を残さないようきれいに仕上げてから次の工程の方に引き継ぐようにして、誰に見られても恥ずかしくない仕事を残したいなと思います。

作業風景

―首里城の火災が発生したときにはどちらにいらっしゃったのでしょうか?

佐渡の専門学校にいた時でした。同期にいた沖縄出身の女の子から朝に「首里城が燃えてる!」ってLINEが来て。それで私もすぐにニュースをつけて火災を知りました。その子は普段すごく明るい子なんですけど、この時は本当にショックを受けている様子が伝わってきて、私も心が痛くなったことを覚えています。
宮大工を目指していたので、将来なにかしら関われるなら関わってみたいという想いは心の隅にありましたけど、まさか本当にこうして復元現場に来られるとは思っていませんでした。

―今回初めて沖縄に来られたということですが、現場の様子はいかがでしょうか?他県との違いなどは感じますか?

とにかく蒸し暑いですね!今回初めて沖縄で冬を過ごさせてもらったんですけど、真冬の2月がいちばん過ごしやすかったです。地元の福岡や「いろは工舎」のある佐賀では凍っている時期なので、沖縄でよかった〜と思いました(笑)これから夏本番になってくるので、暑さに負けないよう頑張らないとなと思います。

作業風景

今、大工だけでも40人ほどが現場に入っていると思いますが、普通はそんなに多い人数だとなかなかまとまらないというか、個々で作業しているイメージなんですけど、この現場はすごくみんな仲が良いですね。県外から来ている人も多いので、仕事終わりにごはんを食べに行ったり、休みの日は一緒に遊びに行く人もいたりして。
山本総棟梁がよく「チーム」という言葉を使うんですけど、本当にチームワークがいい現場だなと実感しています。そういった雰囲気なので、分からないことがあっても質問しやすいですし、全国から様々な技術を持った方が集まっているので本当に勉強になります。
あとは、大工ってなかなか若い人のなり手がいないんですが、こちらには若い人がすごく多いんです。私以外で女性の大工さん(後藤さん)にもこちらの現場で初めて出会えました!

インタビュー #03|後藤 亜和さん(株式会社 社寺建)

―首里城正殿復元作業にかける思いをお聞かせいただけますか?

自分の中で首里城はやはり「沖縄のシンボル」だというイメージがあるので、その大切な建物をしっかりと後世に残していきたいです。それはもちろん沖縄の方のためでもあるし、日本人全員のためでもあるし、自分のためでもあります。
そして、ただ残すだけじゃなくて、見た人が「うわあ、すごいね!」と圧倒されるような美しい建物を残したいです。首里城にはこれまで様々な歴史背景がありますが、その歴史背景も含めて伝えられるような、美しい首里城を残したいと思います。

インタビュー風景

取材日:2024年5月29日

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