首里城2026年マチカンティー

若手職人インタビュー #03

後藤 亜和さん(株式会社 社寺建)

―後藤さんは正殿復元の現場に入られる前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか?

父が沖縄で木造住宅の設計士をやっていまして、高校を卒業してすぐ父が設計した木造住宅の建築現場で大工として働いていました。私は建築の専門学校とかではなく普通高校出身なので、父が依頼した現場の大工さんに見習いでついて、イチから教えていただきながら仕事を覚えていきました。その住宅は心柱(しんばしら)がある在来工法の大きな木造建築だったので、工期も長く二年半ほどずっとその現場にいました。

作業風景

その後、父から「良い機会だから首里城の復興事業に参加してはどうか?」と打診があり、父の知人を介して社寺建の山本会長にお会いして、こちらの現場に入らせていただけることになりました。

―首里城火災の一報を聞いたときはどんな気持ちでしたか?

その時私は高校生で、首里城には一度しか訪れたことがなかったんですけど、自宅と同じ木造建築物ということで首里城には親近感を感じていたので、あんなに燃えるんだ...ととてもショックでした。信じられないような気持ちでしたね。

―現場に入られて最初に担当したのはどんな作業だったのでしょうか?

ここへ来ていちばん最初にやった作業は、正殿下層に建てる丸柱の加工です。ホゾ穴をノミで突いたりする作業で、その作業自体は初めてではなかったんですけど、とにかく木材が大きくて。使う道具もこれまで扱ってきたものとは全然違うので最初は大変でしたね。道具を新しく準備したりいろんな方からお借りして、やっと仕事ができるようになったという感じです。

作業風景

今は正殿上層の外周に建てる丸柱のホゾ穴を埋める、仮の埋め木を作る作業をしています。丸柱は機械にかけて削っていくんですけど、そのときにホゾ穴があると支障が出るので一時的に穴を埋めるための仮の埋め木です。これを必要数削り出して準備する作業です。
最近天井クレーンの資格もとったので、最近では大きな木材を移動する作業もやらせていただけるようになりました。

―作業にあたって難しいと感じることはありますか?

そうですね、初めて扱う機械とかもあるので緊張しますが、いつもベテランの方たちが見に来てくださって「これ注意してね」「ここ気をつけてね」と声をかけてくれたり、使い方を教えてくれたりするのでとてもありがたいです。

作業風景

この現場にはいろんな大工さんがいらっしゃって、いろんな道具を使って作業をしているので、近くで見るだけでもとても勉強になっているなと感じます。私はこれまで誰かに付いてやってきたわけではないので、ここでいろんな人のいろんなやり方を見て、現場のやり方に合わせたり、その中から自分に合うやり方を見つけたりするようにしています。

作業風景

―正殿復元にかける思いをお聞かせいただけますか?

最初は警察官を目指していたので、まさか自分が首里城の復興事業に関われるなんて思ってもいませんでした。首里城は世界に誇れる世界遺産で沖縄を象徴するもののひとつでもあるので、今この現場に居られることを沖縄県民として誇りに思っています。その思いが、日々仕事を頑張ろうという原動力にもなっていますね。

作業風景

先日、父や家族が復元現場の見学に来てくれたんですが、ここで働いている姿を見せられたのがとても嬉しかったです。

取材日:2023年11月21日

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