首里城2026年マチカンティー

若手職人インタビュー #06


奥野 晃輔さん (株式会社 社寺建、副棟梁)

―今回の正殿復元事業に携わることになったきっかけを教えてください。

大学卒業後、一度現在とは別の会社に入社しまして、そちらで2年ほど大工として住宅等の建築に携わっていました。でも仕事をしていくなかで、自分がやりたいと思い描いていた仕事内容とは少し違うなと感じて。最近の住宅って建材のほとんどを機械で加工してしまうので、私たちの大工仕事としては現場に入ってきた建材を組み立てるだけというか……、思っていた以上にマニュアル化されているなと感じたんです。私としてはもっと伝統的な手作業だったり、「難しいこと」をやりたいという思いがありました。それで社寺建築に転向し、現在の会社(株式会社 社寺建)に入社しました。

作業風景

こちらの現場に来ることになったきっかけは、首里城の火災後まだ復元工事が始まっていないぐらいの時期に山本総棟梁(※株式会社 社寺建 代表取締役の山本 信幸氏)から、沖縄の仕事が決まったら行きたいか?というお話があり、「ぜひ行きたいです」と希望を伝えて行くことが決まりました。工事が本格的に始まる2022年11月末頃から沖縄入りしたんですが、長期になる予定なので沖縄に住所を移し、家族も一緒に連れてきました。

―現在どんな業務を担当されているのでしょうか?

現在は軒(のき)まわり、屋根部分の取り付けを進めているところです。
木材の調整や組み立てなど実際に手を動かす作業もやりつつ、棟梁や監督と話し合いながら人員配置や工程などを話し合ったり、現場の方たちに図面を説明したりするのが主な仕事です。

作業風景

現場に入った当初は柱の墨付け作業(※1)から始まって、2023年6月頃からは現在の屋根の工事に入るまでの間、建方(たてかた)といって建物の軸を組んでいく作業を担当していました。

(※1)木材に加工するための目印を記していく作業

―首里城の火災が発生したときにはどちらにいらっしゃったのでしょうか?

前の会社に勤めていた頃で、静岡県におりました。それまで沖縄に行ったことはなかったんですが、首里城といえば誰でも知っている有名な建物なので、あの首里城が燃えたというのは結構衝撃的だったことを覚えています。まだ宮大工にもなっていない頃なので、まさか自分が復元工事の現場に行くことになるとは思ってもみなかったですけど。

―今回初めて沖縄に来られたということですが、現場の様子はいかがでしょうか?他県との違いなどは感じますか?

作業風景

まず基本的にはすごく暖かいですよね!あとは湿気がすごいことにびっくりしました。他の地域と比べてもほんとにジメジメしているなと感じますね。夏場なんかは特にすごかったです。建築に使う木材は沿ったり割れたりしないようしっかり乾燥させたうえで使わないといけないんですが、湿度が高いせいでなかなか乾燥してくれなくて扱いづらいということもありました。

作業風景

それから全国からいろんな職人さんが集まって仕事をしている現場なんですが、みなさん話しやすいですし、良い人ばかりで助かっています。私は副棟梁という立場なので、年齢は若いのに立場でいうと上みたいな感じになってしまって、もしかしたらちょっとやりづらいんじゃないかと心配していた部分があったんですけど、そういったこともなくて。
でもやはり、前回の(平成の)復元工事を経験している80代の大ベテランの方もいらっしゃるので気は引き締まりますね。

―首里城正殿復元作業にかける思いをお聞かせいただけますか?

こんなに大規模な、そして有名な建築物を扱う現場というのもなかなかできない経験なので、吸収できるものはぜんぶ吸収していきたいです。そしてもちろん、「より良い首里城」「品質高い首里城」が仕上がるようにしっかりと作っていきたいと思います。

作業風景

取材日:2024年1月30日

ページのトップへ戻る