首里城2026年マチカンティー

若手職人インタビュー #05


猿渡 光一さん(有限会社 匠弘堂)

―今回の正殿復元事業に携わることになったきっかけを教えてください。

小さい頃からもの作りが好きで、漠然と将来はなにか手を動かすような仕事がしたいと思っていました。それで高校生ぐらいから建築関係を志すようになったんですが、建築のなかでも手作業ならやはり宮大工をやってみたいと思い、大学卒業後に、社寺建築を専門に行う京都の宮大工集団「匠弘堂(しょうこうどう)」に就職しました。入社後は京都を拠点にしつつ、都度全国にある現場へ行って仕事をしています。これまでにお寺の修理をしたり、広島に二ヶ月半ほど滞在して神社の玉垣を新しく作り替えたりしました。
こちらの復元の現場には元々匠弘堂のメンバーが5人いたんですが、今回2人帰ってくるということで私が入れ替わりで沖縄に行くことになりました。

作業風景

―これまで沖縄に来られたことはあったのでしょうか?

いえ。 匠弘堂では、2013年にも首里城の奥書院の復元工事に携わっていますが 、私個人としては今回が初めての沖縄です。首里城の火災が発生した当時は大学生で、すでに建築を志していたこともあって、こういった大きな文化財が燃えるなんてそうそうないことなのですごく驚いたことを覚えています。

―現在どんな業務を担当されているのでしょうか?

作業風景

正殿の外壁に使われる木材の加工作業を行っています。この作業場の隣にある奉神門の外壁も同じ造りになっているんですが、外壁を作るときに板と板の隙間というか間の部分に上から「目板」を貼り付けていくんです。その目板となる木材を機械に通して表面をきれいにしていく作業になります。この後、この木材は別の作業場に運んで漆を塗っていくそうなので塗装前の仕上げの段階です。

―現在の作業で難しいと感じるのはどんなことですか?

そうですね、機械を通すことでだいたいは仕上がるんですけど、木材に凸凹があったりして機械にかからない部分がどうしても出てくるんですね。そうすると見映えが悪くなってしまうので、凸凹を残さないようきちんとチェックして仕上げていくというのが難しいというか、大事だなと思って気をつけているところです。

作業風景

私はまだ入社して一年目なので、これまで屋根裏の修理だったり建物の完成後は見えなくなる部分は色々担当させてもらったんですけど、外から見える部分の材料を加工したのはこの現場が初めてなんです。この目板は完成した正殿を外から見たときにぱっと目に入る部分なので、嬉しさもありつつ緊張感もだいぶありますね。

―沖縄は今回初めてということでしたが、現場の雰囲気はどんな感じでしょうか?

まずここまで大きい現場というのが初めてなので、なんというか、ちょっと圧倒されました。大工さんだけでも全国色々なところからこんなに大勢集まってくる現場もあまりないですよね。
まだまだ分からないことが多くて周りの方に色々聞きながら作業しているんですが、ひとつの作業に対してもいろんな角度から教えてもらったり話が聞けたりするので非常に面白いなと感じながら日々仕事をさせてもらっています。

作業風景

仕事が休みの日には観光地に遊びに行ったり、産業まつりなどのイベントに行ったりして沖縄を楽しみながら過ごしています。生活で困ることは特に無いんですが、沖縄はもやしが高くてびっくりしました(笑)

―首里城正殿復元作業にかける思いをお聞かせいただけますか?

先日本屋さんを訪れたときに「沖縄本コーナー」というのを見かけて、パラパラと色んな本を手にとってみたんです。そこには首里城関連の本もたくさん並んでいたんですが、その中で2019年に火災が起きたときに、首里城が燃えている様子を見て泣いている人の写真を見て、首里城は沖縄の人にとって象徴というか、心の拠り所のような、そういう建物だったのかなというふうに感じました。
火災の後には首里城再建のために全国からたくさんの寄付が寄せられていて、そういう想いのこもったお金で成り立っている仕事だと思うので、その期待に答えられるような、想いを裏切らないような、きちんとした美しい仕事ができるように頑張っていきたいです。

作業風景

取材日:2024年1月30日

ページのトップへ戻る