令和3年度首里城基金修理事業について

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令和元年10月31日に発生した首里城正殿周辺火災においては、多くの皆様にご迷惑、ご心配をおかけいたしました。被災した美術工芸品の状況について、令和2年度にその状況調査を行いました。調査結果は、外部有識者からなる首里城美術工芸品等管理委員会において精査が行われ、高良倉吉委員長(琉球大学名誉教授)より、今後の修理計画、管理方法などについての提言をいただきました。報告書「首里城美術工芸品等管理委員会 報告書 概要版」は、首里城美術工芸品等管理委員会 報告書についてからご確認ください。
令和3年度より、委員会の提言に基づき、以下の美術工芸品について修繕を行う予定になっています。

1)漆器

  • 名称:黒漆牡丹七宝繋沈金食籠(沖縄県指定文化財)
  • 法量:高さ38.9cm 径342cm
  • 概要
    木製円形、印籠蓋造り、二段重ねの食籠。甲面が一段高く、甲盛を設ける。肩や尻にやや丸みを取り、高台を付す。外側は黒漆塗り。甲面には牡丹を描き、地文として七宝繋ぎ文様を隙間なく埋め尽くす。周囲に縦横線と界線を廻らす。肩、蓋鬘、各側面、尻、高台側面には甲面同様の牡丹文様を配す。各段の縁には界線、高台下部には界線と山形波を廻らし、それぞれを沈金で表す。蓋および身上下段の内側は朱漆塗り、身上段の底裏面は黒漆塗り。蓋鬘と各段合口部分は玉縁と箔を施す。身下段の見込に1枚、高台底裏面に2枚、貼紙がある。

尚育王の御後絵1
黒漆牡丹七宝繋沈金食籠

  • 修理
    火災の影響及びこれまでの経年劣化により全体に塗膜の剥離や亀裂が生じています。特に上面や側面の沈金文様の線に沿って塗膜の剥離が生じ、一部は欠損するなど、非常に危険な状態でした。また、上面には貼りついた薄葉紙を取り除いた跡に、紙の繊維が残っていました。劣化が非常に大きいため、複数年にわたる修理が必要なため、令和3年度は、塗膜のクリーニングと膠による塗膜押さえ作業を行っています。
膠による仮養生
蓋表に残る紙繊維
精製水等を使用しクリーニング
カビ等の汚れと亀裂
膠を含ませる作業
膠を含ませる作業
塗膜押さえ作業(複数回行う)
塗膜押さえ作業(複数回行う)
修理前
亀裂の際に漆を含ませ、塗膜の圧着を行う

 

2)絵画

  • 名称:闘鶏図(闘鶏花房之図)
  • 法量:丈117.3cm 幅60cm(本紙)
  • 概要
    首里王府の絵師・毛長禧(1806~1865)が1843年に描いたと考えられています。表具の裂は、王国時代のものではないが、美術史家・鎌倉芳太郎が大正年間に調査した時のものと判明しました。

闘鶏図(闘鶏はなたれ之図)
闘鶏図(闘鶏花房之図)

  • 修理
    当財団収蔵資料のうち「闘鶏図」が修理品を含めて3点あり、三幅対として同一の桐箱に収納されていました。3点とも劣化損傷が著しく、早期の修繕が必要であったため令和2年度から「闘鶏図」3点の修理事業が開始されました。本資料の修理はその2点目になります。修理は、折れやしわ等の劣化が見られるため、解体修理を行う事となりました。本紙の汚れの除去・損傷箇所への補修・補彩を行い、折れの箇所には折れ伏せ紙を入れて表装を行っています。また従来の表装裂により隠れていた描写部分もみえるように裂の付け廻しを修正しました。
表装の解体除去
表装の解体除去
欠損箇所の補修
欠損箇所の補修
折れている箇所への補修
折れている箇所への補修
総裏打ち
総裏打ち

3)今後の修理

令和4年度については、令和3年度から継続している漆器2点を含め17点、絵画を2点、陶磁器類3点を修理する計画となっています。

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