琉球王国のもよう~花鳥風月の楽しみ~

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展示会概要

琉球王国時代の人々は、温帯地域を中心に植生している菊や椿などの花々や、尾長鳥・鶺鴒(せきれい)などの日本的な鳥の図案、孔雀や牡丹などの外国から入ってきた図案や、鳳凰のような架空の生物の図案、中国的な風景を描いた山水図などの「もよう」を好んで使いました。亜熱帯地方の琉球にはいない、諸外国の花々や鳥、自然の風景に憧れを抱いたのかもしれません。
琉球王国時代に製作された漆器・染織・陶器・絵画・書跡などの工芸品の中から、往時の琉球人が愛した花鳥風月の「もよう」を紹介いたします。

花鳥」をモチーフにした もよう

花と鳥を組み合わせ共に描かれた図案のことを花鳥図といいます。古くから鳥をモチーフにした工芸品は数多く作られており、鶏や尾長鳥、燕、鶺鴒、雀、孔雀、鴛鴦、伝説上の鳥である鳳凰など様々な鳥が用いられています。国王の執務室であった御書院に収蔵された工芸品目録の『御書院御物帳』には、御書院に花鳥図があったことが記されています。琉球では、絵画のほか漆器や紅型、陶器など多くの工芸品に描かれています。

かちょうず(こうきへいじゅつしゅんじつ)
花鳥図(康熙丙戌春日)

花鳥図(康熙丙戌春日)
  • 製作年:康熙45(1706)年
  • 作者:孫億 雅号:于峰
  • 孫億は、清朝初期に福建で活躍した絵師である。孫億のもとには、石嶺伝莫(琥自謙)、上原真知(査秉信)、山口宗季(呉師虔)など、多くの琉球人絵師が学んだ。孫億は、花鳥虫草図を得意とし、弟子の山口の画風にも多大な影響を与えた。『御書院御物帳』には、首里城の書院に、三幅対の孫億の花鳥図があったと記録されている。
    本資料の左下に「康熙丙戌春日于峰孫億寫」の署名がある。康熙丙戌は康熙45(1706)年で、山口が福建に滞在し孫億を師事した時期(1704~07)に描かれたようである。しかし、本資料がどのような経路で伝来したかは不明である。

かちょうず(こうきへいじゅつかちょう)
花鳥図(康熙丙戌花朝)

花鳥図(康熙丙戌花朝)
  • 製作年:康熙45(1706)年
  • 作者:孫億 雅号:于峰
  • 孫億は、清朝初期に福建で活躍した絵師である。孫億のもとには、石嶺伝莫(琥自謙)、上原真知(査秉信)、山口宗季(呉師虔)など、多くの琉球人絵師が学んだ。
    本資料には、「康熙丙戌花朝于峰孫億寫」の署名がある。康煕丙戌は康熙45(1706)年、花朝とは旧暦2月のことである。青色で特徴のある太湖石を左下に描き、岩の輪郭部分には金色の顔料を使っている。葉の葉脈の表現も同じ金色の顔料で描いており、孫億の特徴ではないかと思われる。

しゅうるしかちょうらでんしょく
朱漆花鳥螺鈿卓

朱漆花鳥螺鈿卓
  • 製作年代:16世紀
  • 長方形の天板に四脚が付いた卓。脚には畳擦板が廻っている。天板には牡丹や尾長鳥などが描かれ、肩と脚および畳擦板には唐花唐草がそれぞれ螺鈿で表されている。類似資料として、浦添市美術館所蔵の「朱漆牡丹尾長鳥螺鈿卓」(沖縄県指定有形文化財)がある。
  • 萬野裕昭コレクション

しゅうるしほうおうくもつばきちんきんすずりばこよんだんじゅう
朱漆鳳凰雲椿沈金硯箱四段重

朱漆鳳凰雲椿沈金硯箱四段重
  • 製作年代:16~17世紀
  • この硯箱は、上下に大型の硯が1硯ずつ水滴とともに入っており、合計6硯が納まっている。琉球漆器でも希有な作品である。ふた表の窓中に、5羽の鳳凰と雲、地模様に麻葉繋を、周辺と側面には椿を、それぞれ沈金で描いている。

くろうるしかちょうみつだえうるしえぼん
黒漆花鳥密陀絵漆絵盆

黒漆花鳥密陀絵漆絵盆
  • 製作年代:18世紀
  • 見込みが木製、鍔が籃胎の総体黒漆塗りの盆。表面は、下地に網代が埋められ漆塗りされていることから見えないが、鍔裏側は細かな網代が見られる。
    見込みの文様は、密陀絵と漆絵で、太湖石につがいの雉と蓮、石榴などを描き、輪郭は金で縁取られている。中国の吉祥図で婚姻や子孫繁栄を意味するおめでたい図柄が散りばめられている。
  • 萬野裕昭コレクション

くろうるしかちょうみつだえうるしえあじろじきろう
黒漆花鳥密陀絵漆絵網代食籠

黒漆花鳥密陀絵漆絵網代食籠
  • 製作年代:18世紀
  • 木製黒漆塗りの食籠。蓋甲や身の枠内に網代が貼られている。網代部分のみ朱漆塗りで、蓋表は潤塗りとなっている。蓋や身の縁周りと角に、螺鈿で波雲文を施す。螺鈿の所々に金箔の縁取りが見える。蓋表は太湖石に雉2羽、牡丹・椿などの花鳥図を密陀絵で描き、輪郭は金箔で線描きする。雉の目・太湖石部分・花の一部に螺鈿を入れる。
  • 萬野裕昭コレクション

くろうるしかちょうらでんつくえ
黒漆花鳥螺鈿机

黒漆花鳥螺鈿机
  • 製作年代:17世紀
  • 総体黒漆塗で、長方形の天板両端に筆返しのある机。格狭間は四稜形の透かしがあり、畳擦板が脚についている。天板には螺鈿と堆彩という漆の技法を用いて花鳥図が施されており、脚など他の部分には螺鈿にて花鳥などの文様が施されている。
  • 萬野裕昭コレクション

くろうるしともえもんちらしせきれいらでんくら
黒漆巴紋散らし鶺鴒螺鈿鞍

黒漆巴紋散らし鶺鴒螺鈿鞍
  • 製作年代:18世紀
  • 総体黒漆塗りで海有鞍の形式である。螺鈿で巴紋を散らして配置し、中央には岩に留まった1羽の鶺鴒が螺鈿で表され、裏には短冊にした貝片を放射状に配し、光を表した文様らしきものを表現している。全体には微塵の薄貝が蒔かれ、鞍全体が貝で豪華に加飾されている。亀裂、欠けがいくつかあり、その補修跡もみられ、実際に使用していたものと思われる。
  • 萬野裕昭コレクション

ぼたんほうおうまるもんようびんがた
牡丹鳳凰丸模様紅型(製作)

牡丹鳳凰丸模様紅型

  • 製作年:平成17(2005)年
  • 白地型。丸模様の中に鳳凰が描かれ、その丸模様を取り囲む形で牡丹の花が配されている。牡丹は、富貴の象徴でもあるといわれ、王族の象徴ともいえる鳳凰が同時に描かれている図案となっている。
    この紅型は、戦前に鎌倉芳太郎氏によって収集された古型紙を参考に製作された。

すずせいかちょうみずさし
錫製花鳥水差

錫製花鳥水差
錫製花鳥水差
  • 製作年:明治14(1881)年
  • 製作者:大城樽
  • 明治14年に製作されたと思われ、製作者名として「大城樽」と記載されている。琉球王国時代は銀製であったと思われる。中国からの使者を迎える際に飾る道具を記した「冠船之時御道具之図」に同様な水差しが描かれている。本資料も琉球王国時代の技術を踏襲して製作された水差しであると思われる。
    花鳥図を鏨で彫って(彫金)描いている。地模様は、魚々子と呼ばれる魚の卵のような模様が鏨で不規則に打ち込まれている。不規則に打ち込まれた魚々子が琉球彫金の特徴である。

椿」をモチーフにした もよう

椿は、生命力の強さから長寿をあらわすおめでたい模様として親しまれてきました。日本原産の常緑樹で、原種としてヤブツバキがありますが、分布は、青森県夏泊半島から南西諸島まで広い範囲に生息しています。春を告げる聖なる木として、また、その生き生きとした姿から子孫繁栄や厄除けの象徴として好まれました。琉球王国でも、吉祥紋として描かれる椿の花模様は、かなり古い時代からデザインが琉球に伝わり、球漆器や絵画などの多くの美術工芸品に描かれてきました。

しろみつだかちょうはくえぼん
白密陀花鳥箔絵盆

白密陀花鳥箔絵盆
  • 製作年代:16世紀
  • 花や葉は赤や緑の密陀絵という技法で描かれ、枝・花・葉の輪郭、鳥や太湖石等の輪郭線は箔絵という技法で描かれている。5枚あるが、すべて模様は異なっている。
    漆では白色の顔料は発色しないため、桐油もしくは荏油などの植物油に顔料を溶かして描いている。油の乾燥剤として一酸化鉛(密陀僧)を混入することから密陀絵という。密陀絵は白色や淡い色合いの模様を描く時に使用される。

しろたかのず
白鷹之図(複製品)

白鷹之図(複製品)
  • 原資料製作年代:18世紀
  • 山口宗季(呉師虔)は、現在の福建省に留学して絵画を学び王府の絵師となった。本作品も、中国絵画の影響を強く受けた作品であり、白椿の枝に留まる白鷹を描いたものである。

くろうるしちんじゅうるしえみつだえりょうしばこ・すずりばこ
黒漆椿樹漆絵密陀絵料紙箱・硯箱

黒漆椿樹漆絵密陀絵料紙箱・硯箱
  • 製作年代:18世紀
  • 木製漆塗りの料紙箱と硯箱のセットである。硯箱は内部に長方形箱(蓋無・筆入れか)1点と下水板に硯・水滴各1点が収められている。料紙箱・硯箱共に文様は密陀絵や漆絵・箔絵の技法で、蓋表には金の二重界線内に岩に白椿が咲く様子が描かれ、側面には岩に植物が描かれる。
  • 萬野裕昭コレクション

鳳凰」をモチーフにした もよう

鳳凰は、太平の治世に現れ「平和の象徴」とさてきた架空の鳥です。古代中国では、麒麟、龍、霊亀と共に四霊として崇められてきました。鳳を雄、凰が雌を指し鳳凰と読むことから雌雄二羽で描かれ夫婦和合のシンボルともされてきました。中国では、龍は皇帝、鳳凰は皇后を象徴としていますが、古琉球期(1609年以前)の琉球では、日輪(太陽)と共に描かれ、国王を象徴する「もよう」でした。そのため、王家が使用する祭祀道具の漆器を中心に紅型衣裳など多くの工芸品の模様として用いられました。

しゅうるしともえもんほうおうしっぽうつなぎちんきんまるびつ
朱漆巴紋鳳凰七宝繋沈金丸櫃

朱漆巴紋鳳凰七宝繋沈金丸櫃
  • 製作年代:19世紀
  • 王家の紋章である巴紋と鳳凰を沈金で描いた丸櫃。図案は艶やかだが、地の模様の七宝繋が大きく描かれており、16~17世紀の沈金漆器の七宝繋の細かさとかなり違う。
    16~17世紀と比較して模様が簡略化されているため製作年代が大分新しいものと思われる。
  • 萬野裕昭コレクション

くろうるしにちりんほうおうずいうんてんしゃごうしちんきんまるびつ
黒漆日輪鳳凰瑞雲点斜格子沈金丸櫃

黒漆日輪鳳凰瑞雲点斜格子沈金丸櫃
  • 製作年代:16世紀
  • 円筒形、印籠蓋造の丸櫃で外面に黒漆、内面は朱漆を塗る。地文は点斜格子文で、蓋表には日輪と2羽の鳳凰、卍形の瑞雲、界線の外側には縦横線文が施される。蓋側面には瑞雲文が施される。身側面には3羽の鳳凰と瑞雲が表されている。
    このような資料は数点現存するが、本資料のみ底面に3本の足が付けられている。この足は後世に付け足されたものと思われる。丸櫃は本来、勾玉などの神女の装身具を入れるための容器であるが、本資料は後世、香炉入れとして使用されたようである。
  • 萬野裕昭コレクション

しゅうるしほうおうはくえまるびつ
朱漆鳳凰箔絵丸櫃

朱漆鳳凰箔絵丸櫃
  • 製作年代:18世紀
  • 朱漆に箔絵技法で鳳凰を描いた丸櫃。神女が勾玉・扇などの装身具を入れていた道具であると思われる。

きぬきいろじほうおうずいうんこうもりたけたからづくしせいかいたつなみもんようびんがたあわせいしょう
絹黄色地鳳凰瑞雲蝙蝠竹宝尽青海立浪文様紅型袷衣裳

絹黄色地鳳凰瑞雲蝙蝠竹宝尽青海立浪文様紅型袷衣裳
  • 製作年代:平成17年
  • 黄色は、高貴な色とされており、鳳凰や瑞雲、蝙蝠などおめでたい文様がバランスよく配置されている。古い型紙を参考に製作されており、大模様型の紅型である。元服前の王や世子の晴れ着だったと思われる。

きぬももいろじほうおうずいうんかすみびんがたひとえいしょう
絹桃色地鳳凰瑞雲霞紅型単衣裳

絹桃色地鳳凰瑞雲霞紅型単衣裳
  • 製作年代:平成17年
  • 左右に方向を違えた鳳凰とその周りに瑞雲が配置され、霞文様が上下で挟むという大胆な構図になっており、格調高い雰囲気を醸し出している。古い型紙を参考に製作されており、大模様型の紅型である。

牡丹」をモチーフにした もよう

牡丹は、富貴の象徴とされ中国や朝鮮、日本でも様々な工芸品の意匠として用いられてきました。また、その花の美しさから花の王様「百花王」とも言われています。琉球でも牡丹の模様は好まれ、漆器や金工品等の祭祀道具や、紅型や絵画など多くの工芸品にも描かれています。首里城においては、唐破風と呼ばれる正殿の正面にも牡丹が描かれています。

きぬきいろじぼたんおながどりまがききっかもんようびんがたあわせいしょう
絹黄色地牡丹尾長鳥籬菊花文様紅型袷衣裳

絹黄色地牡丹尾長鳥籬菊花文様紅型袷衣裳
  • 製作年代:平成15(2003)年
  • 黄色地で肩に大柄の牡丹を左右対称に咲かせ、裾には竹で編んだ垣根(籬)を描き、菊を咲かせている。その中を尾長鳥が優雅に飛び交う大胆なデザインとなっている。牡丹模様と尾長鳥、菊と垣根の部分は、それぞれ3つの別の型紙で染められている。

りょくうるしぼたんからくさいしだたみちんきんぜん
緑漆牡丹唐草石畳沈金膳

緑漆牡丹唐草石畳沈金膳
緑漆牡丹唐草石畳沈金膳
  • 製作年代:17世紀
  • 鮮やかな緑漆の地色に細かい沈金の刻線で大柄の牡丹を表現している。細かい刻線により牡丹の模様が金色に見える豪華な資料である。

しゅうるししょうかじんぶつらでんこうぼん
朱漆松下人物螺鈿香盆

朱漆松下人物螺鈿香盆
  • 製作年代:18世紀
  • お茶道具で香合などを置くための盆。見込み部分に松の下で蛙を釣る人物、立ち上がり部分に牡丹唐草と七宝繋文を螺鈿で施している。

しゅうるしぼたんからくさちんきんわん(ふたつき)
朱漆牡丹唐草沈金椀(蓋付)

朱漆牡丹唐草沈金椀(蓋付)
  • 製作年代:18~19世紀
  • 朱漆の上に文様を線彫りし、金箔を埋めている。これは、沈金という技法で金色の牡丹と唐草文様があざやかに描かれている。この椀は大小一組で、懐石などに用いられた食器と思われる。

りょくしつぼたんほうおうちんきんかくぼん
緑漆牡丹鳳凰沈金角盆

緑漆牡丹鳳凰沈金角盆
  • 製作年代:18~19世紀
  • 朱漆に沈金で牡丹と鳳凰を描いている。その周囲を緑漆で囲み、箔絵で花と七宝繋紋を描いている。沈金と箔絵をふんだんに使い黄金色に輝くはなやかな作品に仕上がっている。

ししぼたんついさいちゅうおうじょく
獅子牡丹堆彩中央卓

獅子牡丹堆彩中央卓
  • 製作年代:18~19世紀
  • 総体堆彩漆の中央卓。天板は、大輪の牡丹に獅子を描いているが、天板下の鰭(幕板)に龍と牡丹を描いている。鰭から伸びる優美な足にも瑞雲と龍が、矮小な虎を襲っている構図を描いている。龍、獅子、虎の霊獣と百花王である牡丹を取り込んだ吉祥紋尽くしの図案構成となっている。

やきしめはりつけぼたんからくさもんうえきばち
焼締貼付牡丹唐草文植木鉢

焼締貼付牡丹唐草文植木鉢
  • 製作年代:17世紀後半~18世紀前半
  • 牡丹唐草の模様を植木鉢本体へ貼り付けた模様(タックヮーサー)で形作られている。沖縄本島中部の知花地域で作られたと考えられ、薩摩をはじめとする日本へ献上品と考えられる。このような模様を貼り付けた植木鉢は、首里城内でも出土しており、琉球の士族以上の階層が使用したものと思われる。

ごすせんぼりぼたんもんさけつぎ
呉須線彫牡丹文酒注

呉須線彫牡丹文酒注
  • 製作年代:19世紀前半
  • 牡丹の花が線刻で表現されている。轆轤で円形に作られた後、板等で叩いて方形に作られている。琉球王国の士族層が使用した資料である。
    青色の釉薬は、呉須と呼ばれるコバルト化合物。化学調査からコバルト以外の不純物を含む天然呉須と判明している。精製されたコバルト釉薬に比べ自然な風合いを醸しだした作品となっている。

」をモチーフにした もよう

菊は、中国から伝えられたとされており、白や黄、桃、紅色など品種が多い花です。放射状に広がる形や花の美しさから縁起のいいものとされてきました。かつては長生きの薬(漢方薬)として用いられ、不老不死、無病息災に効くとされ、盃に菊花を浮かべた菊酒を飲むと長生きするなどといわれていました。往時、琉球では、漆器や陶器、紅型衣裳などのもようとして用いられました。また、菊の花の形そのものを模した漆器なども製作されました。

ごすせんぼりぼたんもんさけつぎ
黒漆菊花鳥虫七宝繋沈金食籠

黒漆菊花鳥虫七宝繋沈金食籠
  • 製作年代:16世紀
  • 食籠は、首里王府の儀式の際の飾り道具。日常の供物、食事入れ等にも使われた。尚真王から久米島の神女である君南風(ちんべー)に与えたといわれる丸櫃とほぼ同じタイプ。蓋の表に二羽の鳥と菊の花があり、側面に蝶・とんぼ・かまきり等の昆虫類を描いている。地は黒漆だが沈金で全体が金色で覆いつくされているように見えるのが特徴である。
  • 沖縄県指定有形文化財

しろみつだきくちょうはくえぼん
白密陀菊蝶箔絵盆

白密陀菊蝶箔絵盆
  • 製作年代:16世紀
  • 地色は白密陀という密陀絵の技法が用いられ、鍔部の菊や見込部分の菊花をつけた枝、蝶や蜻蛉は箔絵という技法が用いられている。4枚あるが、すべて模様は異なっている。
    漆では白色の顔料は発色しないため、桐油もしくは荏油に顔料を溶かして描いている。油の乾燥剤として一酸化鉛(密陀僧)を混入することから密陀絵という。

しゅうるしさんすいろうかくじんぶつはくえきっかがたごうす
朱漆山水楼閣人物箔絵菊花形合子

朱漆山水楼閣人物箔絵菊花形合子
  • 製作年代:18世紀
  • 本資料の器形は、菊の花を模したもので、茶道具として使われていたものだと思われる。側面には、風景を描いた山水楼閣図が人物と共に箔絵技法で描かれている。合子とは、蓋のついた容器の総称である。

風景」をモチーフにした もよう

工芸品に描かれる模様には、自然の風景を表現したものもあり、その代表的な模様に山水図があります。中国絵画の世界で発達した山水図の図案は、朝鮮・日本・琉球にも伝わり工芸品の図案としても使われました。当時、文化の先進地域であった中国で流行した図案(唐物趣味)を取り入れたのです。山水図の図案を施した工芸品は、唐物を珍重した日本国内への献上品や輸出品に使われました。

しゅりょくうるしさんすいろうかくじんぶつはくえさげじゅう
朱緑漆山水楼閣人物箔絵提重

朱漆山水楼閣人物箔絵菊花形合子
  • 製作年代:19世紀
  • 提重とは、携帯用の重箱セットで、本資料は錫製徳利、四段の重箱、小型の盆などを収納している。朱漆に箔絵で自然と人間、建物を描いている。その周りを緑漆で囲んで全体の雰囲気を引き締めている。緑漆の中には七宝繋紋等を沈金技法で施している。

しゅうるしさんすいろうかくじんぶつはくえたーく
朱漆山水楼閣人物箔絵湯庫

朱漆山水楼閣人物箔絵菊花形合子
  • 製作年代:19世紀
  • 取っ手のついた容器全体は朱漆に塗られ、山や木々などの自然が描かれ、建物の中には、景色を眺めながら語らう人が、箔絵の技法で描かれている。岩などの図案に下地漆を盛りあげ金箔を貼り立体的な表現としている。
    湯庫は、魔法瓶のような機能を持つものである。漆器の中には、蓋と注ぎ口がついた錫製の瓶が納められている。中にお湯を入れ、保温したまま持ち運びできるようになっている。

しゅうるしばいげつらでんちょうほうぼん
朱漆梅月螺鈿長方盆

朱漆梅月螺鈿長方盆
  • 製作年代:17世紀
  • 朱漆に螺鈿で梅や月が描かれている長方形の盆である。立ち上り外面に、網代が施され、足は花刳り形である。花刳り奥には緑色漆が塗られる。
    螺鈿で見込に梅月文、立ち上り口周り周囲には鋸歯文と花菱文で飾られる。主文様である梅月文の貝下の下地は白色に近いと考えられ、貝文を白く厚貝的に表現する意図が感じられる。貝の周囲や表面に漆で細部を描き金箔を施している。
  • 萬野裕昭コレクション

しゅくろうるしさんすいろうかくじんぶつしょうちくついきんらでんふろさきびょうぶ
朱黒漆山水楼閣人物松竹堆錦螺鈿風炉先屏風

朱黒漆山水楼閣人物松竹堆錦螺鈿風炉先屏風

  • 製作年代:19世紀
  • 風炉先屏風とは、茶の湯で広間などを仕切る二折りの低い屏風のことである。琉球漆器で製作された風炉先屏風は珍しい。
    朱を押さえるため、縁を黒漆にし、朱漆を少し残し黒の堆錦枠を取り、楼閣人物と船上の人物を表現豊かに細かい堆錦で絵画的に表現し、「中山宇根」と銘がある。
    また裏面には松竹に漢詩を螺鈿で施しており、この面にも「宇根製」と銘が入っている。漆器に作者が銘を入れる例も非常に珍しい。

しょうしんしょ
尚慎書

尚慎書
  • 製作年:嘉永3(1850)年
  • 製作者:玉川朝達 唐名:尚慎
  • 玉川朝達は、第二尚氏王統第17代国王である尚灝の第六王子で、嘉永3(1850)年に第19代国王尚泰の謝恩使(琉球国王即位の際に感謝の意を表すために江戸幕府に派遣される使者)の正使として江戸に赴いた人物である。
    七言二句で、庭先の桃や李への春風の到来は早く、簾の外の雲や霞が目に入る風景を新鮮に映し出している、という春の風景を詠んでいる。中山(琉球をさす別称)とあるので、謝恩使派遣時に描かれた可能性もある作品である。

うらそえおうじわか
浦添王子和歌

浦添王子和歌
  • 製作年代:19世紀
  • 製作者:浦添朝熹 唐名:尚元魯
  • 浦添王子朝熹は、道光15(1835)年に国相となり、咸豊2(1852)年まで17年間もこの職にあった。薩摩藩とも関係の深い京都の香川景樹に和歌を学んだ。当時、琉球の王族や上流階級は、琉歌だけでなく、和歌のたしなみもあった。本書は、浦添王子朝熹が詠んだ「菫(すみれ)」と題し、「さえわけて 遠く入野の つほ菫 つみぬさきにと ぬりし袖哉」と詠んでいる。

ばけんさいしょ
馬兼才書

馬兼才書
  • 製作年:嘉永3(1850)年
  • 作者:与那原良傑 唐名:馬兼才
  • 馬兼才は、琉球王国末期の三司官。琉球王国が解体し、琉球藩、沖縄県と移行していった時期に明治政府と琉球処分に関する交渉にあたった人物。本書は、江戸上りの時に楽童子として派遣された馬兼才が道中で書いたものと思われる。七言二句で、書斎に入ってくる花の香りと月に映し出された竹の影の美しさを詠んでいる。

お問い合せ先
首里城公園管理センター
TEL:098-886-2020
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