ホーム > 首里城復興へのあゆみ > 首里城2026年マチカンティー > 首里城正殿復元事業インタビュー


―現在のお仕事をされることになったきっかけを教えてください。
呉屋さん:私はもともと食品関係の仕事をしていたんですが、30歳を過ぎて転職を考えていた時に友人からの紹介があり入社しました。
まったく別の業種ですし特に興味があったというわけではなかったんですが、友人から仕事内容を聞いてやってみようかなと。それから現在まで25年以上、瓦製造に携わっています。

加藤さん:私は塗装業やハウスクリーニングなどいくつかの職を転々としていたんですが、結婚を機に安定した仕事をしたいなと思い、こちらの社員募集を見つけて応募して入社しました。
まったくの未経験でしたが体を使う仕事には慣れていたのと、先輩方がやさしく教えてくれたので、スムーズに仕事に入っていくことができたかなと思います。

―普段のお仕事内容を教えてください。
呉屋さん:主な仕事内容は工場の管理や機械のメンテナンス、人員の配置などです。最初にある程度作り方を指導して、あとはそれぞれの担当者に任せるという感じでやっています。
製造している瓦は屋根の先に設置する「軒先瓦」や「平瓦」など全部で5種類あり、在庫や受注に応じて製作しています。瓦だけではなくタイル類も作っています。

加藤さん:私は主に瓦の成型を担当していて、今は「S型瓦」という波型の瓦を作っています。
敷地内にある製土工場で作った土をまず土練機という機械にかけて、焼いた時に破裂しないよう土の中の空気を抜く真空処理をします。その土を機械で大まかな製品の形に切り出した後、プレス機にかけ、傷や欠陥がないか目視で確認しながら仕上げています。

―首里城の火災が発生した時は、どのように感じたでしょうか?
加藤さん:首里城は小さい頃に行ったことがあるぐらいですが、やはり沖縄のシンボルが焼けてしまったということはショックでした。
呉屋さん:私は火災が起きる前の首里城の補修工事に携わっていて、現地に瓦を運び入れたりもしていたので、テレビのニュースで火災を知った時はとても残念な気持ちでした。
火災の少し前に最後の建物がようやく完成したばかりで、その建物自体は正殿から少し離れていたこともあって焼け残ったんですが、全体を建て直すには莫大な費用がかかるので、はたして再建はできるのだろうかと心配していました。

―今回、島袋瓦工場さんは「磚瓦(せんがわら)」を製作されたと伺いましたが、「磚瓦」とはどういったものでしょうか?
呉屋さん:「磚瓦(せんがわら)」は首里城正殿の土台に敷くいわゆる「タイル」のようなもので、一般的なタイルと比べてかなり大きくて分厚いのが特徴です。沖縄県の工業技術センターの研究者と設計士が定めたサイズに合わせて、型を作って製作していきました。
平成の復元の際は本土で製作された磚瓦を使っていたので、沖縄県内で製作するのは今回が初。沖縄県内で採取したクチャという土や赤土に酸化鉄を混合した土を使っています。
※焼成前の磚瓦(上記は検品ではじかれたもの)
―磚瓦を製作するうえで難しかったのは、どのようなところでしょうか?
呉屋さん:本土の瓦は焼成温度が高く吸水率が低いんですが、沖縄の土は本土と同程度の高温で焼成するとガスが溜まって瓦の縁が膨らみ、中で割れてしまうんです。そこで通常は1,000度で焼成するところを、今回は割れないギリギリのラインで1,030度まで温度を上げて焼成しています。
窯入れの際に磚瓦だけで焼成すると窯の中に熱がこもってしまい、それも割れが発生する要因のひとつでした。いろいろ試行錯誤するなかで、試しに通常の瓦と交互に配置してみたらうまくいったので、磚瓦の焼成のために通常の瓦を作り、焼成棚に半々で並べて焼成するという方法にようやくたどり着きました。

焼成後も製品として出荷するには厳格な基準をクリアしなければならず、土に混ざっていた鉄粉がサビとして浮き出た「シミ」が10mmを超えていたり、石灰成分による小さな欠けが1つでもあれば不可となります。土台に敷くものなので、水が溜まって滑ったりしないよう歪みの検査も行われました。
最終的な納品数は3,400枚。焼成前の検査ではじいたものも含めると、総製作枚数は8,100枚。そのうち基準に合格したのは4,000枚と約半数でした。
失敗と試行錯誤を何度も重ねながらの製作は大変でしたが、無事にでき上がった時はほっとしましたね。

―仕事のやりがいや、楽しさを感じるのはどんなところでしょうか?
呉屋さん:自分たちが作った瓦が公共の大きな施設などで使われているのを見ると、大きなやりがいを感じますね。これまでいろいろな建物に携わってきましたが、特に印象深いのはおもろまちにある日本銀行那覇支店です。完成した立派な建物を目にした時は、自分の仕事を誇りに思いました。
加藤さん:仕事をしていて楽しいのはやはりモノが完成したときでしょうか。きれいに仕上がったときには達成感を感じますね。

―最後に、復元される首里城に対する思いをお聞かせいただけますか?
呉屋さん:首里城が完成したら、一度は職場のみんなで見に行きたいですね。そして、自分たちの仕事に誇りを感じられたら最高ですね。心の中で「どうだ!」と自慢したいです。

加藤さん:注文どおりの製品をしっかり作る、ということは他の建物の場合と変わらないですが、やはり自分が作った瓦が首里城に使われるのは沖縄県民としてとても誇らしいです。
これまで納品した瓦を見に行く機会がなかったので、首里城が完成したら家族で磚瓦を見に行けたらと思っています。

取材日:2026年6月22日